モノが余る時代に、「関わり」に投資するべき理由

AIが当たり前になって、アウトプットを「作る」コストはほぼゼロになりつつあります。

文章も、デザインも、コードも、動画も、誰でも一瞬で形にできます。それ自体はすばらしいことです。でも、ひとつ確実に起きるのは、作られたモノやサービス単体の価値が下がっていくということです。

もともと、海外とのやりとりが活発になり、モノもサービスも、より安く、より早く作れる場所を見つけられるようになりました。その結果、モノやサービスの価値はすでに下がり、どこも同じようなものが並ぶ世の中になっています。

SNSを開けば、似たような動画ばかり。お店に行けば、似たような商品が並ぶ。食事に出かけても、似たようなレストランばかりです。AIは、この流れをさらに加速させます。

たとえば、知らないお店で「このワインはヴィンテージで、味に深みがあって、こだわって作られています」と言われても、「いや、で、知らないよ」となりませんか?どのワインも同じじゃないか、と。自分と何のつながりもない相手にこだわりを語られても、もうそれ自体は価値にならない。そういう時代です。

では、価値はどこへ行くのか。私は、こう考えています。

これからは「何が作られたか」ではなく、「自分が関わっているか、作った人のことが好きか、そこに物語があるか」に価値が移る。

だとすれば、私たちがやるべきことは見えてきます。作ることはAIに任せて、自分は「関わること」や「物語を持つこと」に時間を使う。これからは、そこに価値が生まれるからです。

なぜ、人間らしいことに時間を使えるのか

ここで「そんなに人とのつながりや物語に時間を使えるのか?」と思うかもしれません。

可能になります。理由はシンプルで、AIやロボットが、これまで人間がやっていた仕事を代わりにやってくれるようになるからです。

メールの返信。ウェブサイトを作ること。何かをレビューして改善すること。こうしたデスクの上の作業は、AIがやってくれます。AIのほうが速いし、上手いからです。

体を動かす仕事も同じです。物を運ぶ、組み立てる、掃除をする、料理を作る。こうした作業は、これからロボットが担っていきます。すでに工場や倉庫では当たり前になりつつあり、その範囲は家庭やお店にも広がっていくはずです。

つまり、頭を使う作業も、手や体を動かす作業も、だんだん人間がやらなくてよくなっていきます。

これは未来の話ではなく、もう始まっています。私が社長を務めるPortgateでは、定例ミーティングをなくしました。代わりに、各メンバーが報告を入力するシステムを開発したのです。報告を入力すると、AIがそれを分析し、何が足りないかを教えてくれます。背景が足りないのか、数字が足りないのか、成果物が添付されていないのか。細かく指摘してくれます。メンバーはそれに沿って報告を整え、最終的に全員分がまとまったレポートが自動で生成されます。

これまで1時間半かかっていたミーティングが、10分の作業になりました。

その結果、人が働く時間はどんどん減っていきます

では、空いた時間で人は何をするのか。私は、より人間らしいことに時間を使うようになると思っています。

いろんなことを経験する。良いことも、悪いことも経験する。それがストーリーになっていく。人とのつながりを増やす。コミュニティに入る。いろんな人と、いろんな話をする。その会話の中から、新しいアイデアが生まれる。

手を動かす作業はAIに任せ、人間は「経験」と「つながり」に時間を使う。

そうなれば当然、価値の重心は、人にしかできない経験と、人と人とのつながりのほうへ移っていきます。

「誰かが作ったもの」から「自分が関わったもの」へ

もうひとつ、大きな変化が起きると思っています。

人は、誰かが作ったものより、自分が一緒に作った・関わったものに価値を感じるようになるはずです。

自分が少しでも関わっているプロジェクトは、他人事ではなくなります。応援したくなるし、人に話したくなる。「これ、実は私も関わってるんだよ」と言いたくなります。

この気持ちは、お金では買えません。でも、入り口は意外とシンプルです。

少額でいいから出資を募って、リターンを返す。それだけで「関わっている人」が生まれます。

大事なのは、その出資が「儲かるから」ではなく「関わりたいから」「応援したいから」という理由で集まることです。動機がそこにあると、関係の質がまったく変わってきます。

リターンは「もの」ではなく「お金」で返す

ここで、これまでのクラウドファンディングと一線を画したい点があります。

従来のクラファンは、リターンが「もの」や「お礼の品」でした。でも私は、リターンはお金で返すべきだと思っています。

なぜか。

お金が返ってくる関係は、ただの寄付や応援で終わりません。出資した人が、本当の意味で事業の当事者になります。プロジェクトが伸びれば自分にも返ってくる。だから、自然と人に話したくなる。SNSでシェアしたくなる。「自分が関わっている」と伝えたくなります。

つまり、関わっている人全員が、そのプロジェクトのマーケターになるということです。

これは広告では絶対に買えない種類の伝播です。お金で動かしているのに、お金では生み出せない熱量が乗る。当事者の言葉だからこそ届きます。

自分の例で考えてみます。正直、私は服に興味がありません。基本、無地のユニクロしか着ません。

でも、もし友人が質のいい無地のTシャツを作っていたら、私はそれを買うでしょう。そして、もし自分がその事業に投資をしていたなら、120%買います。

しかも、ただ買うだけでは終わりません。売れれば売れるほど、出資している自分にお金が返ってくる。だから周りの人にも全力で紹介するし、SNSでも発信する。Tシャツが売れることが、そのまま自分のリターンになるからです。

服そのものに興味がなくても、「自分が関わっている」というだけで、買うし、広める。お金で返ってくる関係だからこそ、出資した人は当事者になり、自然とマーケターになるのです。

関わりを強める方法は、出資だけじゃない

出資してリターンを返す以外にも、関わりを強くする方法はあります。たとえば、会員券もそのひとつです。

私の友人は、会員制の焼肉屋や鮨屋などを60〜70店舗ほど経営しています。会員券がないと、お店には入れません。このたった一つのルールが、面白いことを起こします。会員は「他の店に行くより、自分の会員券が使える店に行こう」と自然に考えるようになるのです。

この仕組みで、1店舗あたり1億円を生み出しています。

しかも、会員券には特別感があります。だから友人に自慢したくなる。自分の会員券を使って友人を招待したくなります。

特別感を持たせるだけで、その人は自然とマーケターのように動き出す。

出資してリターンを返すのも、会員券を渡すのも、根っこは同じです。「自分が関わっている」という感覚を相手に持ってもらうこと。それが行動を変えます。

冒頭で書いたように、同じようなお店、同じような商品、同じようなサービスが並ぶ世の中です。中身で差がつきにくいからこそ、「自分が関わっているかどうか」という違いが効いてきます。

だからこそ、目先の利益が少し減ってでも、つながりを持てる戦略を取ったほうが、長期的にはプラスになります。

自分自身も、いろんなものに関わっていく

これは、自分のプロジェクトに人を集める側だけの話ではありません。私自身も、人のプロジェクトに関わる側に回るべきだと思っています。

ひとつのプロジェクトだけで完結させる時代ではない。だから私はすでに、いろんなプロジェクトに関わっています。そして、もっと関わりたい。面白いことをやっている人がいたら、ぜひ関わらせてほしいと思っています。

ひとつのプロジェクトで得た知識を、別のプロジェクトに横展開する。関わりが増えるほど、それぞれが相乗効果を生みます。これは、私自身が日々実感していることです。

たとえば私は、YouTubeでドバイの生活や、自分がぶつかった問題、それをどう乗り越えたかというストーリーを定期的に発信しています。それを続けているからこそ、人から信用が集まり、いろんな仕事の依頼が来るようになりました。

そのYouTubeのノウハウがあったからこそ、人狼ゲームの生みの親から人狼ゲームメディアの運営を任され、商標利用権の管理という役割までいただきました。発信のスキルが、まったく別のフィールドの仕事につながったわけです。

ドバイでは法人設立やビザのサポート、不動産事業に関わってきたので、富裕層のお客さんとつながる機会が多くありました。彼らは面白いアイデアをたくさん持っているのに、それを実現する労力と時間がありません。だから「これ、やってみない?」とアイデアをくれる。私はそれを形にする知識を持っているので、一緒に実現していく。そんなことも起きています。

ひとつの場所で得たものを、使える場面では別の場所でも使う。それだけで、関わりはどんどん掛け算になっていきます。

これからは、みんながいろんなものに関わる時代になります。ひとつの会社に所属して、ひとつのものだけを作る。そういう生き方のほうが、むしろ少数派になっていくと思います。

「アドバイスするだけ」の関わりでは弱い

ただ、ここで大事な線引きがあります。

私はこれまで、事業の相談を受けて、自分の経験からいろんなアドバイスをしてきました。でも、そのプロジェクトが成功しても、私には何のリターンもありません。そういうことが、本当にたくさんありました。

しかも、アドバイスをした側は覚えていても、された側は覚えていないことが多い。結局、アドバイスをした側が損をする。こういう話は、周りでもよく聞きます。本来なら、助けてくれた人に後からしっかり感謝や恩返しをすればいいだけの話です。でも、人間はすぐ忘れる生き物です。

正直に言うと、これは私自身も同じです。今までアドバイスをくれた人に、私もちゃんと恩返しができていません。できる限り返していこうとは思っているのですが、まだできていない人も多いし、そもそも忘れてしまっている可能性もかなり高い。人を責められた話ではないのです。

だからこそ、感謝や恩返しを「人の記憶」に頼るのではなく、仕組みにしてwin-winの状態を作る。

お金を出資している。少しでもオーナー権を持っている。会員券のように特別な立場をもらっている。形は何でもいいのですが、そういう実体のある関わり方が必要になります。なぜなら、当事者意識は「自分ごと」になる仕掛けから生まれるからです。少しでも自分のものだと思えるからこそ、人は本気で動きます。

つながってさえいれば、いつでも相談できるし、お互いの強みを生かし合える。みんな一人でやろうとするから失敗するのであって、知識を持ったプロに頼んだり、仲間にできれば、早く確実に成功に近づけます。

私はドバイに住んでいて、いろんな人が新しいことに挑戦するのを見てきました。でも、多くの人が失敗しています。その理由のひとつが、やはり一人でやろうとすることです。最初から現地で知識のある人を仲間に入れたり、関わりを持つ戦略を取っていれば、その人たちが購入したり広めてくれたかもしれません。

特にドバイには日本人コミュニティがあります。そのコミュニティの人たちに「関わり」を、そして「リターン」を提供できれば、彼らが一気にドバイ中に広めてくれる可能性だってあるのです。

だから私は、自分がやっているプロジェクトに関わりたい人を募集していきたいと思っています。そして私自身も、面白いと思ったプロジェクトには、お金を出して関わっていきたい。

コミュニティが広がり、経済圏になる

こうして関わりが増えていくと、何が起きるか。

関わっている人全員にとっての相乗効果が生まれ、自分が関わるコミュニティがどんどん広がっていきます。そしてそのコミュニティは、やがて経済圏になります。

お互いのプロジェクトを応援し合い、人を送り合い、知識を交換し合う。ひとりで戦うより、はるかに遠くまで行ける集団になります。

特に私のように、学生から経営者、投資家まで、いろんな層の人と会う人間。そしてメディアで発信をしている人間にとっては、関わっているプロジェクトが多ければ多いほど、その人に合ったものを紹介できます。そして、その紹介が最終的に自分のメリットにもなるのであれば、もっと強く、自信を持って紹介できるようになります。

これからは、全員が「自分株式会社」であり、「自分メディア」になる時代だと思っています。いろんなプロジェクトに関わり、コラボしていき、こうしたエコシステムの中に自分を置く。それが何より重要になります。

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